TMS（経頭蓋磁気刺激）治療に興味はあるけれど、
「自分は対象になるの？」「どんな人に向いている治療なの？」
と疑問に思われる方は多いのではないでしょうか。

今回は、TMS治療の適応（向いている方）について、できるだけ分かりやすくご紹介します。

TMS治療の主な適応

一般的に、TMS治療は次のような方が対象となります。

① うつ病・うつ状態と診断されている方

TMS治療は、うつ病に対する治療として位置づけられています。気分の落ち込み、意欲低下、興味や喜びを感じにくいといった症状が続いている場合に検討されます。

② 抗うつ薬の効果が十分でなかった方

・薬をしっかり飲んでいるのに効果を感じにくい
・何種類か試したが改善が乏しい

このようなケースで、次の治療選択肢の一つとしてTMSが考えられることがあります。

③ 薬の副作用がつらい方

眠気、体重増加、吐き気など、薬の副作用が強く出てしまい治療継続が難しい方にとって、TMSは「薬を使わない治療」として検討されることがあります。

④ 外来通院が可能な方

TMS治療は、1回で終わる治療ではなく、数週間にわたって定期的に通院する必要があります。そのため、継続して通えることが大切なポイントになります。

TMS治療の適応疾患について

現在、日本で主にTMS治療の対象となっているのはうつ病（特にうつ状態が長引いている場合）です。保険診療・自由診療いずれの場合でも、基本的にはうつ症状を主とした疾患が中心となります。

★なお、当院では自由診療のみ行っております。

「発達障害はどうなの？」という質問について

お問い合わせでよくいただくのが、
「発達障害（ASD・ADHD）でもTMS治療は受けられますか？」
というご質問です。

現時点で、日本において発達障害そのものがTMS治療の標準的な適応疾患とされているわけではありません。そのため、発達障害の特性（不注意、こだわり、対人関係の困難さなど）自体を直接改善する目的でTMSを行うことは、一般的ではありません。

一方で、発達障害を背景にうつ病や抑うつ状態を合併している場合や二次的に気分の落ち込みや意欲低下が強く出ている場合には、「主な治療対象がうつ症状である」という前提のもと、TMS治療が検討されるケースもあります。

この場合も、発達障害の特性そのものへの効果を期待するというよりは、併存するうつ症状の改善を目的とした治療である点を理解しておくことが大切です。

TMSが向かない・慎重な判断が必要なケース

TMS治療は比較的安全性の高い治療とされていますが、すべての方に適しているわけではありません。ここでは、実際の外来で説明することの多い「TMSが向かない、または慎重な判断が必要なケース」を具体的にご紹介します。

① 頭部や体内に金属・医療機器が入っている方

頭部の手術歴があり金属が入っている場合や、ペースメーカー、人工内耳、脳深部刺激装置などの医療機器を使用している場合は、磁気刺激の影響を受ける可能性があるため、TMS治療は適応外となります。

② てんかん・けいれん発作の既往がある方

TMS治療ではごくまれにけいれん発作が起こる可能性があるため、てんかんの既往がある方や、過去に原因不明のけいれんを起こしたことがある方は、適応外となります。

③ 主症状がうつ病以外の場合

不安障害、強迫症、発達障害、統合失調症などが主な診断で、抑うつ症状が中心でない場合は、TMS治療の効果が十分に期待できないことがあります。

④ 重度の躁状態・精神病症状がある場合

双極性障害で躁状態が強い場合や、幻覚・妄想などの精神病症状が前面に出ている場合には、症状を悪化させる可能性があるため、TMSは適さないことがあります。

⑤ 通院の継続が難しい場合

TMS治療は、数週間にわたってほぼ毎日、または週に複数回の通院が必要になります。そのため、仕事や家庭の事情などで通院継続が難しい場合、十分な効果が得られにくいことがあります。

「向いているかどうか」は一緒に考えます

TMS治療は、魔法のように誰にでも効く治療ではありません。しかし、これまでの治療で十分な効果が得られなかった方にとって、新たな選択肢になり得る治療です。

「自分は対象になるのかな？」
「今の治療に行き詰まりを感じている」

そんな時は、一人で悩まず、まずは医師やスタッフに相談してみてください。適応かどうかを含めて、一緒に考えていくことが大切です。

ひとやすみこころのクリニック西新院
福岡市早良区西新４丁目8-23-3F
看護師　白水