2025年9月10日

日々の診療の中で「私はカウンセリングを受けたほうがよいでしょうか?」とご質問をいただくことがあります。診察とカウンセリングは似ているようでいて役割が異なるため、今回はその違いについてご説明いたします。
診察とは
診察は、精神的な不調や身体にあらわれる症状について、医師が心理・社会的要因を含めて診断し、治療を行う医療行為です。治療には精神療法、環境調整、薬物療法などが含まれます。
診察の場では、問題点を整理し、生活の工夫やアドバイスをお伝えすることもあります。ただし、保険診療であるため診察時間には制限があり、ゆっくりとお話を聴ける余裕がないことも少なくありません。そのため、十分に状況を把握できないままアドバイスをすると、かえって「否定された」と感じられてしまう場合があります。逆に、お話を聴くだけで診察を終えることもあり、その際には「何もアドバイスされなかった」と感じられることもあるかもしれません。
カウンセリングとは
一方でカウンセリングは、診断や薬物療法を行わず、対話を通して心を丁寧に見つめていく心理相談・支援です。悩みや困りごとに焦点を当て、心の重荷を軽くし、生きやすさを取り戻すことを目指します。
診断や投薬が不要であるため、病気と診断されていなくても利用可能です。当院では心理士が担当しておりますが、医師や看護師が行っている医療機関もあります。なお、カウンセリングは医療保険が使える場面が限られているため、多くの場合は自費となります(当院も自費診療です)。
ざっくりと要約して比較してみると

となります。
どちらを受けたらよいか迷うとき
次のような場合には、カウンセリングを検討されるとよいでしょう。
・診察では話し足りない、もっとじっくり相談したい
・アドバイスよりも自分の気持ちを整理する時間がほしい
・認知行動療法など時間をかける心理療法を希望している
・診察を続けても改善が乏しく、トラウマ体験など別の視点でのアプローチが必要そう
まとめ
診察とカウンセリングは、それぞれ役割や視点が異なります。診察での治療を続けてもなかなか改善が得られない場合には、カウンセリングという選択肢を検討することも大切です。
当院ではカウンセリングの相談例もご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
理事長 柳原孝章